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南溟を泳ぐも四度

2018/ 08/ 11
                 
  南溟を泳ぐも四度夢になほ  江流

  紺碧の赤道に搗く草の餅

 毎日新聞社会面の記事「徴用船 まるで特攻」を読み、即座に思い浮かんだ俳句が江流氏の上掲二句である。両句とも、アマチュア無線に没頭していたころ、交信相手局である江流氏から届いた交信証明書に載せられていた。

 江流氏からの交信証明書には、片面に三井船舶のAZUMASAN MARUの絵と「昭和18年ガダルカナルにて戦没」という文字が載せられているものもある。江流氏もまた、太平洋戦争の際、国家総動員体制のもと、兵士や武器などの輸送のために徴用された民間の輸送船の乗組員だったに違いない。

 新聞記事には「撃沈3度 死と隣り合わせ」、「徴用船 まるで特攻」、「92歳元乗組員 仲間いまだ海の底」、「船員死亡率 軍人の2倍」の太文字。

  南溟を泳ぐも四度夢になほ  江流

 「南溟」は南方にある暗くて大きな海。陸地ならば冥途の同義語と言ってよいかもしれない。死者の霊魂が行く暗黒の世界。自分もまた死者となるかもしれない暗黒の海を漂っている。死と隣り合わせの撃沈を四度も体験させられてしまった。戦争が終わり平和な時代になったはずなのに、その時の体験を思い出しては悪夢にうなされてしまう。

  紺碧の赤道に搗く草の餅  江流

 連合国側の魚雷攻撃などを受けることなく無事、兵士や武器を戦場である南方へ運ぶことができた。ほんのつかの間の休息。日本は正月間近、今ごろは餅を搗いていることだろう。赤道直下の南方から遙かに離れた日本にいる家族を思い浮かべながら、今この瞬間、仲間の船員たちとともに餅を搗く。

 たくさんの仲間が亡くなったガダルカナルなどの戦場から奇跡的に生還。交信証明書で知った平和な時代の江流氏の二句。

  滴りを分かつ北海地中海  江流

  出雲弁面にくゞもる里神楽

 江流氏は出雲、松江の人だった。交信証明書によると、いずれも7MHzの電信で交信している。アマチュア無線のコンテストに参加した際にコールしていただいたようだ。存命ならばかなりの年齢と、無線局等情報検索システムで検索したところヒットしなかった。サイレント・キー、逝去されたのかもしれない。

 現在、防衛省を中心として、民間船員を予備自衛官とし、有事の際に活用する計画が進められている。
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